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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「こりゃあ大した別嬪さんたい!社長はたいした男前やけど、この坊ちゃんはまたえらく綺麗か貌しとるとね!

新橋の縣商会のオフィスで、礼也から紹介された取締役の1人に開けっぴろげに褒めちぎられ、暁はその白絹のような頬を朱に染めた。

縣商会の従業員は創業者である祖父の出身地、福岡は飯塚のものが多い。
礼也の代になり、東京出身の若者も増えたが会社を取り仕切る幹部は荒削りできつい博多弁の男たちが幅を利かせているのだ。
そんな九州男児達に舐めるようにジロジロ見られ、少年のように目を輝かせられて美貌を褒めちぎられ、俯いてしまう暁を庇うように、礼也は宥めた。
「おいおい、暁が困っているじゃないか。…暁はまだ大学を卒業したばかりで西も東も分からない社会人だからな。皆、優しく教えてやってくれ」
礼也に促され、暁は慌てて頭を下げて挨拶する。
「縣暁です。どうぞよろしくお願いいたします」

そんな暁に従業員たちは歓声を上げる。
「可愛か坊ちゃんやのう!そんなに緊張せんでよかよか!儂等が優しゅう教えちゃるけん。…しかし、ほんまに綺麗か貌たい…」
「坊ちゃん!坊ちゃんの机はこっちたい!儂が昨日綺麗に磨いといたけん!こっちにきんしゃい!」
あっと言う間に法被を着た若い衆に囲まれてしまった暁を見ながら、礼也は嬉しそうに傍らの大紋に囁く。
「すっかり人気者だ。暁は大人しい性格だから心配していたが…」
「ああ、良かったな。ここの従業員たちは皆、口は荒いが心根は優しくて飾らない人達ばかりだから、きっとすぐに溶け込めるさ」
大紋もまた、従業員たちに囲まれ、恥ずかしそうに笑いながらも一生懸命話す暁を見つめ、嬉し気に頷いた。

…暁は22歳になった。
優秀な成績を納め帝大を首席で卒業し、この四月から兄が社長を務める会社のひとつ、縣商会に入社した。
「こんな可愛か坊ちゃんは、いきなり炭鉱はキツかろう。レストランや百貨店の仕事から始めてもらうのがよかろうもん」
と、先代から務める大番頭の玉木からの助言があったからだ。
暁はこの会社で、海千山千の取締役や、血気盛んな従業員達に揉まれながら務めることになるが、この調子なら大丈夫かな…と大紋は密かに胸を撫で下ろす。

大紋はこの縣商会でも顧問弁護士を務めている。
週に一度は顔を出しているので、これからは度々暁に会えると思うと知らず知らずの内に顔が綻ぶのだった。

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