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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「…微力ながらお手伝いいたします」
「…でも君、料理は…?」
月城は早くもジャケットを脱ぎながら
「執事見習いに入った日から屋敷の料理長に仕込まれました。いつ何時必要になるか分からないからと…。
…洋食全般なら一応の心得があります」
説明する。
「…月城…ありがとう…」
安堵の余り溜息を吐く暁を励ますように、月城は笑いかける。
「さあ、暁様。時間がありません。
…伊東さん、どうか医者に行かれてください。
…三浦さん、遠慮なくご指示ください」
伊東と三浦は、ぽかんとした顔をしながら、この思いがけぬ頼もしくも美しい救世主に見惚れたのだった。

「…凄か人やね…色男だけでなく料理もできると⁈」
「さあ、皆んなで開店準備じゃあ!坊ちゃんのために、必ず成功させるけんね!」
色めき立つ従業員たちを前に、暁も漸く笑顔を見せた。

厨房に入り、暁は月城にギャルソンエプロンを付けてやる。
月城はシャツを腕まくりし、三浦から細かく聞き取りをする。
月城の後ろから引きしまった腰に生成りのエプロンを結んでやりながら、しみじみと礼を言う。
「…君には助けて貰ってばかりだな…」
月城は自分の前でエプロンの紐を結び終えた暁の華奢な手をそっと握りしめた。
暁の手が思わずびくりと震える。
「…暁様のお役に立つのならば、こんなに嬉しいことはありません」
「…月城…」
見上げた月城の切れ長で端麗な瞳が笑っていた。
…月城は兄さんみたいだ。
僕が困った時や、苦しい時に必ず手を差し伸べてくれる…。
月城にどう感謝の気持ちを伝えようかと躊躇いながら、口を開いた時、
「坊ちゃん!そろそろ開店しても良かですか?…もう店の前に行列が出来ちょるけん!」
「わあ!こりゃすごかねえ!」
興奮気味の従業員の声が聞こえた。
「は、はい!お願いします!」
月城は暁を励ますように微笑みながら頷いて、しなやかな動きで厨房へと入っていった。

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