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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
「春馬、おめでとう!三国一の花婿ぶりだな!」
陽気な笑顔とともに現れたのは、礼也だった。
テイルコートにホワイトタイ、颯爽とした紳士ぶりだ。
礼也は大紋と固く握手をしながら笑顔で
「私よりお前が先に結婚するとは思わなかったよ。
…幸せになってくれ」
と冗談交じりに口を開く。
「…ありがとう。礼也」
礼也の背後には…
…やはり誰もいない。
大紋の視線に気づいたのか、礼也は残念そうな貌をした。
「…暁は今朝から体調を崩していてね。
…済まないが、式は出られなくなったんだ。
くれぐれも春馬によろしく伝えてくれと頼まれたよ」
予想はしていたので驚きはなかった。
招待しないと礼也が不審がるだろうから、兄弟宛てで招待状は出したが、元恋人の挙式に暁が来るはずはないと思っていた。
むしろ暁に苦しい嘘を吐かせて、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「いや、気にしないでくれ。
…それより、暁は大丈夫か?」
「本人も大したことはないと言っている。
…ただ…」
礼也は改まった口調で切り出す。
「…春馬、暁と何かあったのか?」
「…え?」
「最近、全く会っていないだろう?…以前はどちらが兄か分からないほど仲が良かったのに…仲違いでもしたのか?」
大紋は穏やかな笑顔で首を振る。
「…いや、何もないよ。
…暁は大人になったんだ。…僕がいなくても、もう立派に世間を渡ってゆける…僕から卒業したのさ…」
…卒業、そんな綺麗な言葉は最も不似合いな僕たちだった…。
…暁のすべてを愛した。
暁のすべてを奪った。
暁の…暁の…
…狂おしいくらいの妄執を抱く相手に、自分はもう出会うことはないだろう…。
自分の愛はもう終わったのだ。
「…そうか、それならいいが…」
礼也が自分に納得させるように呟いた時、外のチャペルの鐘が厳かに鳴った。
静かなノックの音とともにドアが開き、西坊城家の家政婦が現れ一礼し、恭しく挨拶を述べる。
「…春馬様、挙式のお時間となりました。
…どうぞ教会の方へお越しください」
大紋は頷き、礼也を見ると小さく笑った。
そうして、大紋は介添人の礼也とともに控え室を後にしたのだった。
陽気な笑顔とともに現れたのは、礼也だった。
テイルコートにホワイトタイ、颯爽とした紳士ぶりだ。
礼也は大紋と固く握手をしながら笑顔で
「私よりお前が先に結婚するとは思わなかったよ。
…幸せになってくれ」
と冗談交じりに口を開く。
「…ありがとう。礼也」
礼也の背後には…
…やはり誰もいない。
大紋の視線に気づいたのか、礼也は残念そうな貌をした。
「…暁は今朝から体調を崩していてね。
…済まないが、式は出られなくなったんだ。
くれぐれも春馬によろしく伝えてくれと頼まれたよ」
予想はしていたので驚きはなかった。
招待しないと礼也が不審がるだろうから、兄弟宛てで招待状は出したが、元恋人の挙式に暁が来るはずはないと思っていた。
むしろ暁に苦しい嘘を吐かせて、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「いや、気にしないでくれ。
…それより、暁は大丈夫か?」
「本人も大したことはないと言っている。
…ただ…」
礼也は改まった口調で切り出す。
「…春馬、暁と何かあったのか?」
「…え?」
「最近、全く会っていないだろう?…以前はどちらが兄か分からないほど仲が良かったのに…仲違いでもしたのか?」
大紋は穏やかな笑顔で首を振る。
「…いや、何もないよ。
…暁は大人になったんだ。…僕がいなくても、もう立派に世間を渡ってゆける…僕から卒業したのさ…」
…卒業、そんな綺麗な言葉は最も不似合いな僕たちだった…。
…暁のすべてを愛した。
暁のすべてを奪った。
暁の…暁の…
…狂おしいくらいの妄執を抱く相手に、自分はもう出会うことはないだろう…。
自分の愛はもう終わったのだ。
「…そうか、それならいいが…」
礼也が自分に納得させるように呟いた時、外のチャペルの鐘が厳かに鳴った。
静かなノックの音とともにドアが開き、西坊城家の家政婦が現れ一礼し、恭しく挨拶を述べる。
「…春馬様、挙式のお時間となりました。
…どうぞ教会の方へお越しください」
大紋は頷き、礼也を見ると小さく笑った。
そうして、大紋は介添人の礼也とともに控え室を後にしたのだった。