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暁の星と月
第2章 新たな扉
大紋は息もできないほど、暁を強く抱きすくめたまま耳元で熱くかき口説く。
「…ごめんね…こんなこと、急に言い出して…でも…気持ち悪いと思わないでくれ…」
思わず、暁は首を振る。
その動作が伝わったのか、大紋はふっと抱擁する腕の力を弱め、今度は暁の美しく繊細な顔の稜線を愛しげになぞり始めた。
どうしたら良いのか分からず、目を伏せている暁に囁く。
「…僕を見て…暁くん…」
恐る恐る大紋を見上げる。
吐息が掛かりそうなほどの距離で暁を見つめる大紋の眼差しには息を飲むような熱い情動があった。
「…君を一目見た時からずっと君に惹かれていた。なんて綺麗で儚げな男の子だろうと胸を鷲掴みにされた。…こんな気持ちは初めてだった。
…僕は同性愛者ではない。だからなぜこんなにも君が気になるのか分からなくて、ずっと悩んだ…。でも、君に逢わずにはいられなかった。そして逢えば逢うほど君を好きになっていった…。僕はあっけないほど簡単に君に恋してしまったんだ…」
小さく笑った大紋の端正な顔は切なげで、暁の胸もずきりと痛む。

暁は少女のように美しい容姿から昔から男に性的な対象で見られることが多かった。
亡くなった母の男達から襲われそうになったことも一度や二度ではなかった。
だから、自分をそういった目で見られることは何よりも嫌悪感があったのだ。
しかし…大紋の告白にはそれを全く感じなかった。
ただ暁の心に切なく響き、どうしたらよいのか分からずに混乱していた。
そんな暁の胸の内を読み取ったかのように、大紋は優しく暁の頬を撫でた。
「…心配しなくていいよ。君はまだ子供だ。子供の君に大人の私が何かするなんて一番卑怯なことだ。君には何もしない。明日からはこんなことを二度と言ったりしない。約束する」
「…大紋さん…」
「…けれど、これだけは許してくれ。君の側で君を見守り続けることを…君に恋し続けることを…そして君には今まで通り、僕に接してほしい」
「…でも…」
大紋は寂しげに笑い、大切な弟にするように暁の額に額を押し当てる。
「…君は自由だ。伸び伸び成長して…そして誰かに恋をしていいんだ。…ただ僕に君の成長を側で見守らせてほしい…僕の願いはそれだけだ」
暁は大紋を見つめた。
大紋は
「…ごめんね、暁くん」
と、哀しげな眼差しで詫びながら微笑んだ。

…蓄音機のレコードはいつの間にか音を奏でずに、回り続けていた。
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