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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
司がいるダイニングに戻った暁に、執事の生田がそっと囁いた。
「暁様。縣商会から車と…従業員の方々が到着されました」
暁は頷く。
「ありがとう。みんなには裏口のホールで待機して貰ってくれ」
「かしこまりました」
生田が足早にダイニングを出る。
暁は、アップルパイを食べ終わりご機嫌でメイドと遊ぶ司を笑顔で抱き上げる。
「さあ、お母様と忍さんのところに行こうね」

裏口のホールに司と暁が現れると、縣商会の法被を着た7人の小人…ならぬ暁の親衛隊の内の三人が嬉しそうに待ち構えていた。
「坊ちゃんが三名なんて言いよるから、小競り合いが起こって大変だったったいね」
「皆んな、俺も坊ちゃんの力になりたかあ!て行きたがったとよ」
暁は思わず笑みを漏らす。
「ありがとう、みんな」
親衛隊達は暁の花のような笑顔を見て、小娘のようにもじもじした。

暁は表情を引き締めた。
「…君達には晴海埠頭までの送りと護衛を頼みたいんだ。…もしかすると夫人とこの坊やを奪還しようとする奴らが現れるかもしれない。…どうか三人が無事に船に乗るまで守ってあげてほしい」
親衛隊たちは鬨の声を上げるように叫んだ。
「おう!坊ちゃん、任せときんしゃい!…儂等、飯塚の炭鉱育ちじゃけん、そういうことにゃあ血が騒ぐんよ!」
「そうたい!…万が一、危害を加えるような輩が現れたら…ボコボコにして玄界灘に沈めちゃるけんのう!」
男達の濁声に司は目を丸くしながらも、きゃっきゃと笑い出した。
親衛隊の一人が相好を崩して、司に手を差し伸べる。
「可愛か坊ちゃんたいね!さあ、こっちにきんしゃい!」
司は普段見慣れない荒くれ男にニコニコと抱かれた。
「司、これからお船に乗るんだよ。ふらんすにいくの」
「それは羨ましかあ〜。おフランスにいかれると〜?」
束の間の和やかな空気が流れる。

そこに司の乳母のミツが百合子の荷物を持ち、慌ただしく現れた。
司を見ると
「まあ…!坊ちゃま!よくぞご無事で…」
と泣き崩れた。
司はきょとんとした眼差しでミツを見る。
司を抱き上げた親衛隊の一人が、ミツに話しかける。
「心配せんでよかよ。儂等がちゃあんと坊ちゃんたちを船まで護衛するけんね!」
ミツは涙を拭いながら頷いた。
「…坊ちゃま…どうかお元気で…ミツは坊ちゃまと奥様と忍様のお幸せをお祈りしておりますよ…」
司はミツに無邪気に笑い返した。


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