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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
二人の眼差しは暫く重なりあったが、どちらからともなくぎこちなく外した。
暁は俯き、月城は小さく咳払いをする。

やがて月城は受け取った写真をじっと見つめ
「…皆さん、とてもお幸せそうですね…」
と感想を漏らした。
「…うん。…本当に良かった…」
暁は微笑んだ。
そして、側できらきら輝くクリスマスツリーを見上げる。
「…パリのクリスマスって、どんなものなのかな…」

クリスマスツリーのキャンドルに照らされた暁の横顔は美しい耽美主義の絵画のようで、月城は思わず見惚れる。
「…パリに行かれたいですか?」
優しく尋ねる。
「…そうだね。いつか、行きたいけれど…」
暁はゆっくりと月城を見上げた。
「…でも今はまだここにいたい。…ここには兄さんがいるし…それに…君がいるから…」
月城は切れ長の美しい眼を一瞬見開き、やがて暁を包み込むように微笑った。
「…はい。私はここにおります」
暁は嬉しそうに小さく頷くと、立ち上がりツリー越しの外の景色を眺める。
そして何かを発見したかのように、足早に硝子窓に近づく。
「…いかがされましたか?」
月城も後を追う。
暁は夜空を見上げたまま呟く。
「…月城、雪だ…」

漆黒の闇を映す硝子が、仄白く輝く。
吸い込まれそうな夜天から、まるで天使の贈り物のような白い雪の結晶が優しく舞い降りて来る。
雪の花が舞い落ちる背景には、屋敷の舞踏室が見えた。
微かに聞こえるワルツの調べに載せ、正装した男女が華やかに舞い踊る姿が硝子窓に、まるで影絵のように映し出される。

雪は降り積もる。
静かに…密やかに…
この胸に芽生えた微かな…しかし大切な想いを、覆い尽くされそうで暁はゆっくりと、背後の男を振り返る。

「…月城。…メリークリスマス…」
聖画のように静謐で穢れのない美しい青年に、思わず眼を奪われる。
月城は込み上げる熱い想いを堪えるかのようにゆっくりと瞬きし、いつものように穏やかに微笑った。
「…メリークリスマス。暁様…」













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