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暁の星と月
第11章 クリスマスの贈り物
翌朝、朝食室で席に着いていると、礼也に伴われ光が現れた。
慌てて立ち上がる暁に光は華やかな、しかしはにかんだ笑顔を見せた。
「お久ぶりね、暁さん。…まあ、相変わらず…いえ、益々お美しくなられて…」
「ご無沙汰しております。光さん…」
…どう挨拶したらいいのか戸惑う暁に、礼也は光を悪戯めいた微笑みを浮かべながら紹介する。
「…月城に聞いたかも知れないが、見合い中の光さんを略奪してきた。…今日から光さんはここで暮らす。
…暁、仲良くして差し上げてくれ」
光はその大きな瞳を見開く。
「まあ、礼也さん!貴方、本気なの?」
礼也は悲し気に光を見つめる。
「…嫌なの?」
「嫌じゃないけれど…余りに急すぎて…。私、着の身着のままで来てしまったから…」
華やかな薔薇の綸子縮緬の振り袖は、大層似合っているが、昨夜と同じ出で立ちなのが妙に生々しく映る。
「午前中に三越の外商を呼んである。必要なものを揃えたまえ。…ドレスに靴に帽子…バッグもいるな。…そうだ。着物も揃えたら?…光さんの着物姿は洋装と同じくらいに美しい…。
…着付けなら私がしてあげるから…」
礼也は光の白く美しい手を握りしめ、キスを落とす。
礼也の余りに明け透けな愛の表現に、暁は思わず目を伏せる。
光は苦笑しながら
「…着物は好きじゃないの。動きづらくて窮屈この上ないわ。…ねえ、一度北白川のお家に戻ってもいい?…身の廻りのものを取りに行きたいし、梨央さんとも話したいの」
礼也は白く滑らかな光の頬を優しく撫でながらきっぱりと言う。
「…それならうちの侍女に行かせよう。君はまだ駄目だ。…お父上がまた君を軟禁しないとも限らない。梨央さんはうちに来ていただけばいい。ここで話しなさい」
光は呆れたように溜息を吐く。
「…貴方って見かけによらず、束縛なさるタイプなのね」
礼也は光の小さな美しい貌を引き寄せ、甘く囁く。
「…そう、私も初めて気づいたよ。…私は光さんをもう手離したくないんだ。…お願いだからここにいてくれ…」
「…礼也さん…」
光の美しい瞳が他愛もなく潤み出す。

生田はベテランの執事らしく眉ひとつ動かさずに、二人の席の用意をメイドに促すが、若いメイド達はこのいつもはマナーの見本のように冷静で気品に満ちた美しい主人が、人目をはばからずに美貌の公爵令嬢に愛を語る様子を、頬を染めながら見惚れるのであった。




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