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第24章 香港ー周到なる罠

確かに周りは『盟主らしく』と言っていたが、八神様は全く変わらず。
これは仁科様せいも大きい、『今のままで』が仁科様の望む事。自分もそれは知っていた。
だからといって、今此処で言われるとは……。

「……ぷっ。
自分も、八神様はそのままで良いと思います」

堪えきれず、つい声まで。
本当に盟主の恩恵なのだろうか？

「私も今のままが良い。
そしてルークも、今のルークが良いです」
「努力は……してみます」
「うん、ありがとうルーク」

本来の瞳ではないが、穏やかに笑い細められるグリーン色の澄んだ瞳。
その表情に惹き込まれそうになるのは……自分。
似たような事を言い、自分に向かって笑い掛ける。
同じとして見ているんじゃない、八神様は八神様の主義趣向があり、比べるのも烏滸がましい。
……でも惹かれる心は、もう止められそうにない。

（すみません……仁科様。
自分も八神様に敵いそうにありません)

跪いていたので、自分が少し動けば……触れ合う唇。
どれくらいぶりだろう、心ある柔らかい温もりなど。
ずっと……長く忘れていた、本気になれる女性の温もり。

「……ルーク」
「お嫌でしたでしょうか？」
「うんん。
ルークが歩み寄ってくれたのが嬉しくて……私、私……」
「今はこれで勘弁して下さい。やはり自分にはまだ時間が必要そうです」
「何時までも待つから。
ルークがお爺ちゃんになっても待つよ私」
「それはそれで、自分の方が嫌ですが……」