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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択

「記憶が戻ってみれば、俺自身生きていることが不思議だったからな。
意識が朦朧として、これで死ぬとは思ったさ。だが、よくよく考えれば、直前に仁科が居た、そう思うと自ずと答えは見えて来る」
「その記憶はあるんですね」
「生き死にが関わるものは、鮮烈に残るだろう?」
「…………」

主宰の言う通り、私でも人間の生き死にの記憶は、今でも簡単に思い出せるほど。ましてや本人が死にゆく前の記憶です、一番強烈に記憶に残るのは言うまでもない事。

「でも完全じゃないんですよね櫻澤さん?」
「事細かい繋がりとか、どの辺まで思い出していますか主宰」
「全部は思い出していない。特に日本は色々と動いた筈なんだが、大きな所は分かるんだが、細部までは曖昧と言うしかないんだろう」

今の私達に欲しいのは、主宰が言う細部の部分。大きなものは私達で何とかなりましたが、主宰独自の繋がりまでは私達には真似出来ません。
それに封じを解放すれば、力のコントロールと飢えと慣れという問題が付き纏い、一番適任なのは……ルークでしょうね。

「早く思い出して頂かないと、私達も困ります。後は記憶が戻ったんです、私の封じはもう必要無いですね」

座っていた場所から立ち上がり、未だ立ったままだった主宰に並ぶような位置で止まった。

「此方は私にすれば簡単なことです」

封じた時と同じように、主宰の首筋に指を付け、止めていた力の解放へと持って行くだけ。特に何かが変わる訳ではありませんが、持つ力はあまりにも違う。……直ぐに慣れますかね?

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