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華の王妃
第4章 ユリウス



「さぁ私が姫君の為に調理した野菜のスープと取れたての
果物でございますよ。お腹の御子の為に少しでもお召し上がり下さい。」


リンダリアの耳元に囁いたユリウスの言葉は今のリンダリアにとっては
唯一の生きる希望だった。


リンダリアは憔悴した顔をユリウスに向けるとユリウスはスプーンに
良く煮込まれた野菜を掬いリンダリアの口へと持っていく。


ハッとしたようなリンダリアの顔に慈愛に満ちた顔を向けると
優しく優しく言葉を紡いだ。




「私は王の臣ではございますがアルゴスの民ではございません。
結果的には王を裏切ることになりましょうが、敵国で一人ぼっちと
なられた姫君をどうして見捨てるような真似が出来ましょうか。」


小さく紡がれた言葉はリンダリアの耳にしか届かない。



「私が無事姫君の御子を産み参らせるよう手助け致します。」


「ユリウス・・・  」


「ですから姫君も母として御子をだけを愛し守ることをお誓い下さい。
これから待ち受ける困難も悲しみもすべては御子を守る為、
耐えなくてはなりません。
姫君の望まないことを強いられても夫君を裏切る形となっても。」


ユリウスはまだ目立たない腹に優しく手を置くとリンダリアの憔悴した
顔にほんのりと紅がさした。





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