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華の王妃
第5章 王弟

その晩、ナリエスはリンダリアととりとめのない話や楽などを
聞かせたりして短い夜を過ごした。


最初の頃よりほんの少し笑みを浮かべるようになったリンダリアにナリエスは
はにかんだような可愛らしい笑みを浮かべると



「また機会がありましたらお伺いしても良いでしょうか。」


と勇気を振り絞るように問いかけた。


リンダリアはユリウスを伺うように見るとユリウスは小さく頷きながら


「ここ数日は王の夜のお渡りはない筈です。召使に手引きさせます故
今宵のように身を窶してお越しください。」


「わ、わかった。」


道ならぬ恋人同士のような算段にナリエスの胸も自然と高鳴った。



                  *

「本当に胸を高鳴らせたものです。食べ物も喉を通らず義姉上にお会い出来るのを
ひたすら願っておりました。」


再会は二日後にやってきた。


召使いの棟がある廊下を通るように言われたナリエスは質は良いが装飾の無い
衣服に地味なマントを被りリンダリアの部屋を訪れた。


部屋に入って来たナリエスを見て花が咲いたような笑顔を浮かべた
リンダリアにユリウスはナリエスに口を開く。


「王弟殿下とお会いされてから幾分か食も進まれ笑顔を浮かべるように
なられました。お礼を申し上げます。」


「否、そんな礼だなんて、わ、私も姫君にお会い出来て嬉しい。」


「殿下のご様子を拝見しそのように推察申し上げます。どうか今後も
姫君と仲睦まじくして頂くと医官としてただ一人の臣として
この上もなき喜びと存じます。」


「そ、そうか?」


「はい。姫君はこの国では頼るべきお相手もおらず、この上もなく
寂しい身の上なのです。恐れながら殿下はお優しく思いやりに
溢れたお人柄。どうぞ今後とも姫君にお力添えくださいますよう。」


「わ、私は兄のように勇猛ではないし、男らしくもない。読書や楽を
嗜むしか能のない人間です。そ、それでも姫君が良いと仰って
下さるのなら・・・ 」


「まぁ・・・ 」



リンダリアが可笑しそうにクスリと笑った気がした。





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