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第1章 哲と広瀬。

「もう、無理なんだよな、きっと」
「……」

そう、ぽつりと呟いた広瀬の声が俺の胸にチクリと刺さった。
ほんの少しの痛みがじわりと広がる。


「なあ、広瀬」
「ん？」
「俺はさ、そう簡単に切り替えられない気持ちってわかるからさ。だから、思う存分好きでいていいと思うんだよ。
誰になんと言われようと」
「……」

広瀬は少し目を見開いて俺を見つめている。


「ただ、壊すような真似だけはしないで欲しいけど」
「……それは、しない。てか、出来ねーよ。……あんな幸せそうな坂本見たら」
「……広瀬」


厳しくて公私混同しない課長だったけど、蛍ちゃんの前にいる課長はただの恋する一人の男の人にしか見えなかった。
そして、そんな課長に笑顔を見せる蛍ちゃん。


その笑顔は俺が今まで見た中でも、ピカイチだった。