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第2章 高野 正一郎
「…たまたま聞いたんや。狭い村やもの。知っとっても別におかしないやろ?」

確かにそれも一理ある。けど、ゼンエモンの家は元々金貸しや。トキエのうちの借金も、そっからやと聞いたことがある…

「………まさか、俺がお前との縁談断ったからトキエに要らん差金したワケやないやろうな…」

込み上げる怒りを抑え、呟いた。

タエは目を逸らし、耳のあたりの髪をぽりぽりと掻く。
その白々しい態度にムカッ腹が立つ。

同時に、トキエの縁談も、それを断れんように仕向けたんも、コイツや、と悟った。

「………何が別嬪や。本家のお嬢さんだかなんだか知らんけど、お前みたいなタチの悪いオンナ見たことない。お前みたいな性悪、抱く気もせんわ。朝んなったらウチに帰れ。縁談も反故や。」

「…なっ!アンタ自分が言うとることがわかってんの?もう祝言も済んでんのに帰れるワケないやろ?」
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