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第1章 孤独な王子

　国王は妻の生命と引き替えに生まれてきた娘を溺愛し、裏腹に五歳の息子には見向きもしなくなった。エーデリンデ王国の法律では国王の離婚は認められているが、離婚した場合、元王妃所生の王子はたとえ第一王子といえども継承権を認めないとされている。


　ミランダ王妃が生きていれば、間違いなく離婚は実現したに相違なく、トーマス王子は王位継承権第一位でありながら、継承権を失うことになっていただろう。



　国王が息子を嫌う原因は他にもあった。トーマス王子が国王に似ていないのだ。ミランダ王妃がトーマス王子を身籠もった頃、国王夫妻は蜜月中で、特に問題はなかった。ミランダ王妃にも恋人の陰はなく、間違いなく王子は国王の子であるはずなのに、何故か王子は国王には少しも似ていない。