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第1章 孤独な王子

　母は何でもこの王国でもとりわけ由緒を誇る公爵家の遠縁になるといい、紡績産業で知られるエーデリンデ王国で著名な紡績会社の社長令嬢だった。当然、ロザリナの祖父母はまだこのエーデリンデに健在で、ロザリナも休日にはたまに祖父母の暮らす郊外の豪邸に遊びにいく。




　今、会社の代表取締役の座は母の弟である叔父が引き継いでいる。父は出世にも金にも関心のない浮世離れした人だ。ヨーロッパの中世史研究が専門で、研究しか頭にないような根っからの学者である。当然、ロザリナの父方桐島家にお金などあるはずもない。



　とはいえ、父は国立大学の教授を務めていて、相応のサラリーは入ってくるので、桐島一家は慎ましく暮らしていた。ロザリナの留学費用は孫娘を掌中の玉と愛でる母方の祖父母が歓んで出してくれている。