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君に咲く黒百合
第1章 春の嵐

アザミの蕾が開く頃。

夫の白石幸太が失踪した。

朝普段通り幸太を起こしにいくと、ベッドはもぬけの殻。

クローゼットの中身もスーツケースも消えていて、ご丁寧に置き手紙が枕元に置いてあるだけ。

宛名には『純へ』と書かれ、中の便箋には下手くそな文字でその理由が綴られていた。


『他に好きな人が出来たから、これからはその人と暮らします。
どうか探さないで』


…これ、たった二行。

それだけに怒りより先、失望感が込み上げてきて。

幸太への愛が一気に冷めた。


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