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あんなこんなエロ短編集
第23章 悲しみが流れてゆく
キンコーン



キンコーン




インターホンの音が響いている。




男は「チッ」と舌打ちし、




階段に向かって走って行ってしまった。





「あ…………」





後ろ姿で分かってしまった。






あれは、今日の客の1人だ。





背が低いのでシルエットを覚えていた。





「………はぁっ、はあ、はあっ……」




誰か分かった途端、




止めていた息がぼろっと出た。




隣の部屋の住人は寝ているからか、




不在だからか、




関わりたくないからか出て来ない。




「何なのよ…………」





警察に言うべきか?




いや、先に店長に言うべきなのか。





スマホを取り出し迷った挙げ句、





どちらも止めにした。





私はとても疲れている。




恐怖はあるが、





寝なくては。




明日が来るのだ。






またなに食わぬ顔をして会社に行かなくてはならない











部屋に入って、





服を脱いだ。




ベッドに倒れ込む。





「…………ふ…………」




沼のように重い体。




「………ひっ、…………くっ……」




私は泣いた。





涙が雨のように次々溢れてきた。




暗い部屋に自分の泣き声だけが響く。




隅に押しやっていた『なぜ』たちが溢れてくる。




なぜ私を利用したの。




なぜ愛していたの。




なぜ私は理不尽なお金を稼いでいるのーーー










大好きだったあの人のシルエットが、




先ほどの男と重なって脳裏に浮かぶ。







浮かんで消えて行った………………………………………



































〔終わり〕





















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