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第16章 未来へ
いつか…自分を「面接官」と
冗談混じりに言ったソウタさんを
思い出していた


ソウタさんは…
恩人の大切な孫娘であるアイルを



…本当に大切に大切に

アイルのおじいさんに誓って
アイルのおじいさんに代わって

守ってきたのだな、と思うと


改めて
尊敬の念を表さずにいられなかった






人間として・・・同じ男として


深くて強い・・・





ソウタさんに


無性に会いたくなった




『ソウタさんね
私を引き取ってくれたときも

〃ここから愛留も俺達も三人でやり直すんだ〃

って…自分の建てた
今の、あの病院に私を迎えてくれたの

だから…私が別でやらなくても…
あそこがあるから

あそこに…
おじいちゃんの想いもあるから

それに、全部…私を受け入れて…今も
未だに私のことをこんなに…

良くしてくれるソウタさんやマナさん
周りの人達に
返しきれないくらいの恩があるから

これから私が…しっかり成長して
ちゃんと、自分の力で

今度は私がその人達を助けて
少しでもいいから、恩返しできたら幸せ

それが今、夢・・・かな』





アイルの望むこと



アイルの言う

〃幸せ〃や〃夢〃が…あまりに

あまりにもささやかすぎて



オレは…涙を止めることができなかった





もっと…欲深くたって良いじゃないか


もっとワガママ言ったって良いじゃないか…




だけどこれは…アイルを哀れんだ涙じゃない



オレといるときにもそうだ


本当にささやかなこと……
どこにでも転がっていることを

〃幸せ〃

と呼ぶアイル…




どうとでも手を伸ばせそうな
小さなことを

〃夢〃

というアイル…



それも私欲などない…
大切な人達を想っての
幸せや夢


その心が…眩しすぎたからだ


特別なことはおろか、〃人並みのこと〃さえ
〃望んでいない〃と言っていた
いつかのアイルを思い出す


こんな…純粋で奥深い想いを知らなかった
当時のオレは、アイルのことを

〃年相応の女の子らしさもないヘンなヤツ〃

なんて思っていた


アイルのこんな…透明の心に触れた今…
それを嬉しく思うオレと
恐れ多いと思うオレがいた



アイルは…あまりに繊細に
人間が出来すぎている



オレは…自分が
メチャクチャ汚(けが)れた人間にさえ思えた
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