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第20章 下された罰
ずぶ濡れの体を引きずって帰る


体も…心も…

中身が空っぽみたいだ




一人で住むには少し広いオレの部屋




所々にアイルのいた形跡の残る空間…



アイルだけがいない





かすかにアイルの匂いだけを残して…







ソウタさんに殴られた左頬が
ズキズキと
音を立てるように痛む




何故かその痛みが…
ほんの少しだけオレを安心させた





…オレを、少しも

これっぽっちも責めずに

一人、身を引いていったアイル






…もっと…うんと
オレを責め立てて
罵倒してくれたら良かった、とさえ思う




…そのアイルに代わって
誰かに戒めて欲しかったんだ



最低な…愚かなオレを…





これは…


このオレ自身の
どうしようもないほどの心の痛みは…




人を・・・

大切な人を…傷つけたことの





この痛みは…切なさは…


のらりくらりと…不誠実に生きてきた

人を傷つけてきた

オレに…跳ね返ってきた〃罰〃だろうか



アイルを…失うことで知る

傷つく痛み

人を…傷つける痛み

こんなにも……痛くて、苦しいんだな




痛い…。



痛い。



痛てぇよ。



痛くて…たまらない





アイルを…失うことが
オレへの…何よりの


…最大の罰だ。









もっと早く…
こんな事になる前に

アイルに出逢う前に
それを知っていれば…


時が、もどせるならば…


なんて、途方もないことを思った


そんな事は…どれも不可能なのだから



だって…人を…
誰かを大切に想う気持ち
その喜び…

どうしようもなく愛おしいと思う気持ち…

自分の何に代えても相手を守りたいと思う心…

その手に触れる幸せ…

この手に抱きしめる幸せ…

そのぬくもり…

失いたくない、という想い…

幸せに……したいという想い





その全てを


オレに…教えてくれたのは


アイルだからだ






そして…そんな相手を

大切な人を傷つける痛み

失うこわさ…苦しみ

絶望…罪悪感……自分の無力さまでも

それさえも全て…

オレは

アイルに教わってしまったのだから


とりかえしがつかない…





後悔なんてしても、何も戻らないのだ



オレは…バカだ


どうしようもないバカだ
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