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仮初めの恋人
第1章 快楽を宿して~飯田奈緒美の依頼~
このところ売り上げが落ちてきていることを気に病んでいたが、彼と肌を重ねることで落ち着きを取り戻せた。

なんの解決にもなっていないが、焦ってばかりいても仕方ない。

「今日はありがとう」

ホテルを出たところで礼を述べる。

「俺の方こそ」

シンジは朗らかな顔で答えた。

「じゃあ」

これ以上名残惜しんでいたらせっかくの晴れ晴れとした気持ちがまた湿気ってしまいそうで、奈緒美は背を向けて歩き出していた。
振り返らなくても彼が見送っていることは分かっていた。

(ただの娼男遊びだから)

そうドライに割り切って奈緒美は振り返らずに街の人混みの中へと紛れ込んでいった。

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