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第1章 2016年

2016年ーバーチャルリアリティーと呼ばれる産業に画期的な発明があった。
視覚、聴覚において、｢より、現実味｣と言われる｢リアリティー｣を求めている中で、触覚の遠隔操作、バーチャリティーの手段が発明された。

これを見た時に、ある者は、まず性産業に生かせると考えたという。
デリバリーの必要も、出逢い形とされるネットワーク産業も消え失せた。
そこからの進化は目まぐるしいもので、味覚、嗅覚のバーチャルリアリティーも、そしてその伝達方法も開発されていった。

その当時の人達はそれを異次元進化と呼び、
バーチャルリアリティーを駆使した産業を、それまで次列で付けていた数字を位上げし、第10次産業と名付けた。

後の人達はtenと呼び、そこに『天』の字を充てた。
そこから文字は一人歩きし、仮想空間、バーチャルリアリティー、関連する全てを総称して『天』というようになった。
バーチャルは国境を要さない。表面上の国境は存在し続けたが、『天』の存在が全ての空間に行き渡り支配した。

一方、昔の名前は廃れてしまったが、仮想通貨という観念が一般化し、リアルな貨幣は存在しなくなった。皮肉なことに仮想通貨の名は『リアル』だ。