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遠い日の約束。
第3章 言い伝え
彼は、湖を見つめたまま動かなかった。
真っ直ぐ一点を見つめて寂しそうな表情を向けていた。
どこくら、見つめていただろう。
一陣の風が吹き抜けた瞬間、彼の表情が柔らかくなり優しい表情に変わった。
そして私の方に手を差し伸べる。
私の存在に気がついていないと思っていたけど、ちゃんと私の存在に気がついていてくれた。
それがうれしくて、駆け寄ってその手を取った。
恋人つなぎをしてくる彼の顔を見上げた。
私の方を見ることもなく口を開く。

「また…会いに来るから…」

それが誰に言った言葉なのかなんとなく分かった。
だけど、どうしてふたりに執着するのか分からない。

「はい…また会いに来ましょう…次は大きな花束を持って」

即答した私を振り返り満面な笑みを広げる。

「ありがとう」

またしても、なぜ『ありがとう』なのか分からない。
だけど、またふたりで来れる喜びの方が大きかったから深くは考えなかった。
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