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第9章 幸せな日々の中で

今にも泣き出してしまいそうな顔を見られたくなくて下を向く。
そこには私の手を握りしてくれている俊樹の手が見え、その手にポタリと涙がひとつぶ零れてしまった。
やっぱり弱いなと思う。
これだけで泣いてしまう私は弱すぎると、また涙が溢れ出す。

「草野…」

部長が私の名前を呼ぶ。
だけど顔を上げられない私は返事もできずに下を向いたままだった。
そんな私に部長が大きな溜息を吐く。
それが益々私を不安にする。

「立花…怒るなよ」

意味不明な言葉を残して部長は立ち上がり私の横に座った。
そして部長は私の頭に手を添えると自分の方に引き寄せて抱きしめた。
私の手を握っている俊樹の手に力が籠る。
そして私は…何も言えないまま抱きしめられていた。
俊樹と違う、安らぐ胸の中。
父親に抱きしめられている錯覚すら起こしそうになった。

「泣くな……泣かなくていい…。もっと自分に自信を持て」

頭に添えられている手が私の髪の毛を撫でる。