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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
休日の夕方、月城はキッチンにいた。
「最近、お食事をあまり召し上がっていらっしゃらないでしょう?…今夜はきちんと召し上がっていただきますよ」
と、小さな子どもを諌めるように優しく微笑い、メニューを読み上げた。
「…筍ご飯、鮎の塩焼き、揚げ出し豆腐、春菊の白和え、葛餅…。…こんな質素なメニューでいいんですか?」
眉を上げる。
…何が食べたいですか?…と聞いたら、暁がそう答えたのだった。
暁はダイニングのテーブルの前に座り、嬉しそうに頷く。
「…うん。月城の和食が大好きなんだ…」
月城は、暁に微笑みかけるとギャルソンエプロンをつけながら言った。
「では、おまちください。…暁様はごゆっくりされていて下さい。…庭の芍薬が咲き始めましたよ…」

流しで手を洗っていると、ふわりと異国の花めいた切なげな薫りが漂い、月城の腰に華奢な手が絡みついた。
暁が後ろからぎゅっと抱きついてきた。
「…暁様…?」
「…月城…。…初恋の人は忘れられないものなのか?」
おずおずと暁が尋ねる。
「…暁様…」
月城が躊躇していると、暁が更に強く抱きつく。
「…君の初恋の人は梨央様だろう?…毎日お会いになるし…いつまでも忘れられないんじゃないかと思って…」
月城はふっと息を吐く。
暁の白く華奢な手に手を重ねる。
「…貴方は、大紋様を忘れられませんか…?」
暁は慌てて首を振る。
「…僕は…違う!…春馬さんのことはもう想い出だ!」
月城がゆっくりと振り返る。
そして暁の顔を優しく包み込む。
「…私も同じです。…まあ、私の場合は毎日お会いするので想い出とは少し違いますが…。懐かしい記憶…とでも申しましょうか…」
暁は噛み締めるように月城の話を聞く。
「…懐かしい記憶…」
「…私と梨央様の間には何もありませんでした。…だから綺麗な言葉で表せるのかもしれません。…貴方の場合は、まだ生々しい部分もあるでしょう。…想いが残られていても無理はありません。…でも、私は気にしません。…なぜなら、私は貴方との想い出など必要ないからです」

暁は黒目勝ちな瞳を見開いた。
「…月城…?」
月城はそっと頬を撫でる。
「…私は貴方と生きてゆきたいのです。想い出などではなく、生身の貴方と共に生きてゆきたいのです…」
「…月城…」
暁の黒い瞳に水晶のような涙が溢れる。
…月城は、いつも僕が一番欲しい言葉をくれるのだ…。


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