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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…僕は君が与えてくれるものなら、何でも嬉しいんだ…喜びや幸せだけでなく、哀しみや寂しさや苦しさや…そんな感情でも君が与えてくれるものならなんでも嬉しい…。だから、気にしないで…」
暁は月城の手を愛おし気に握りしめ、頬に当てた。
月城の美しい手は相変わらずひんやりと冷たくて、暁に安心感を与える。
「…貴方は私を甘やかせすぎです。もっと我儘を言って下さって良いのですよ。…私が貴方に与えて差し上げられるものはほんの僅かなものでしかありませんが…」
暁は潤んだ瞳で見上げる。
「…じゃあ、ひとつだけ。ずっと一緒にいて…他には何もいらないから…。ずっと…」
…そのあとの言葉は月城の熱い唇に飲み込まれた。
アルコールの酔いとそれに勝るとも劣らない男の舌に熱さに暁の身体は一瞬にして燃え上がる。
痛いほど抱きすくめられ、口内を荒々しく狂おしく食まれる。
「…んっ…ああ…っ…つき…しろ…」
「…これ以上、私を骨抜きにしないでください…貴方は…無意識だからたちが悪い…」
小さな貌を強く掴まれ、熱い瞳で見つめられる。
暁はうっとりと目を細める。
「…だって…僕は君に夢中だから…。君に愛されるようになって十年以上経つけれど、益々君を好きになる。…君の恋人でいられることを毎日、神様に感謝している。…その反面、こんな幸福がずっと続くのか、毎日不安になる。…だから…僕の願いはひとつだけだ。…森、ずっと僕と一緒にいて…」
「…暁…!」
この類稀なる美しくも健気で玻璃のように繊細な恋人を、ただ抱きしめることしか出来ない自分の非力さに忸怩たる思いに囚われる。
言葉は無力だ。
どれだけ言葉を尽くしても…自分がこの奇跡のように美しく純粋な可愛らしい恋人を如何に愛しているかを語っても、どれも色褪せて感じられるのだ。
…けれど、月城はやはり伝えずにはいられない。

その白く滑らかな頬を愛撫しながら囁く。
「…愛しています。暁様…。例えこの世界が終わっても…私がこの世から去っても、私の魂は永遠に貴方を捜しあて、貴方を抱きしめるでしょう…」
月城の指に暁の透明な温かい涙が溢れ落ちる。
「…ありがとう…月城…。僕もだよ。…僕も永遠に君のそばを離れない…永遠に…」
今度は暁から唇を重ねた。
柔らかな傷つきやすい花のような唇を月城は優しく労わるように奪い、その華奢な身体を愛おしみながら抱きしめたのだった。



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