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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…さっきから何度もご覧になっていらっしゃいますね。珈琲のお代わりはいかがですか?」
冬の朝陽が射し込むダイニングのテーブルの椅子に座り、一葉の写真を飽くことなく眺めている暁に月城は珈琲を勧めながら尋ねた。

…ああ…と、貌を上げ男に微笑みかける。
「…こんなに可愛かった子どもがもうすっかり大人になったのかと思うと感慨深くてね…」
月城にその写真を手渡す。
月城は端正な眉を上げ、思わず笑みを漏らす。
…普段は近寄りがたいような怜悧な美貌の男だが、その貌は笑うと太陽が射したかのように明るく輝く。
そんな男を見るのが暁は好きだった。

「…これはやんちゃだ…」
暁はくすくすと笑いだす。
「ハロウィーンの写真らしいから仕方ない。…けれど、両親も手を焼く腕白な子どもだったらしいよ」
…写真は西洋のお祭り、ハロウィーンの仮装のものらしい。
風間と百合子に背後から羽交い締めにされながら写真に納まっている司は…当時7歳くらいだろうか…海賊の衣装に貌には墨で思い切り落書きされている。
しかもカメラに向かいアカンベーをしている見るからに腕白な子どもの姿が映っていた。
「…司くんは、日本にいる時から物怖じしない元気な子どもだったな。…あの夜も司くんの明るさが救いだった…」

…暁は遠い目をして想い出す。
風間と百合子を百合子の実家の追っ手から匿いながら、フランスへと逃亡させた。
周りが緊迫する中、司はまるで観光に行くかのように始終にこにこして、護衛についた縣商会の強面の社員達にも懐き、すっかり彼らのアイドルとなったのだ。

「…あの子どもがもう18歳か…」
…時が経つのは早いな…。
暁は写真を大切そうにワイシャツの胸ポケットにしまいながらしみじみと思う。
「そろそろお迎えの車が到着する時間です」
「…うん」
月城に促され、柱時計を見上げながら立ち上がる。

流れるような動きで暁にジャケットを着せかけながら、月城が囁いた。
「…司様は風間様に似て大層な美青年にご成長されたご様子ですね。…ご性格もお父様似かもしれません」
暁は優美な眉を寄せ、男を振り返る。

「…もしかして、司くんを気にしてるのか?」
眼鏡越しの端麗な瞳に捉えられたかと思うと、しなやかにその細身だが逞しい胸に抱き込まれる。
「…もちろんです。暁様」
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