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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
20年ぶりに見る大川の花火は驚くほどに大きくて、明るくて華やかで美しかった。
暁は子どもの頃に戻ったかのように、瞬きもせずに川向こうから次々と打ち上げられる花火を一途に見上げていた。
その白く美しい貌が花火の明かりに照らされ、きらきらと輝いていた。

月城はそっと、愛しい恋人を見下ろす。
暁がそれに気づき、月城を見上げる。
そのしっとりとした黒い瞳には水晶のような涙が浮かんでいた。
月城は優しく頷くと、暁の手をそっと握りしめた。
華奢な手がぎゅっと握り返される。
花火が打ち上がる派手な音と賑やかな人々の歓声の中、暁が囁く。
「…ありがとう、月城…」
月城は黙って微笑む。
「…愛している、月城…」
花火に照らされた白い頬に涙が伝う。
月城はその涙を優しく拭いながら答える。
「…愛しています、暁様…」
人々が打ち上がる花火に気を取られている合間に、月城はそっと暁の唇を奪う。
暁が恥ずかしそうに瞬きし、月城の身体にもたれかかる。
月城の浴衣は暁とお揃いの白い麻の葉模様だ。
清潔な新品の布地の匂いがする。
「…僕は幸せだ…」
呟くと、
「私もです…」
と返された。

「…ねえ、来年も再来年も一緒に花火を見ようね」
「…はい、暁様」
「…その次の年も、またその次の年も…ずっと…ずっと…」
「…はい、ずっとご一緒に見ましょう…」

暁が黙ってしまったので心配になり、下を覗くと月城の手の甲に透明な水滴が溢れ落ちた。
月城は、優しく暁の髪を撫でる。
「…ずっと、ずっと…私たちは永遠に一緒です…」
暁はもう泣きじゃくっているので、返事が出来ない。
…だから月城は、繰り返す。
「…ずっと、ずっと…一緒です…」

…夜天の中空には大きな夏の華が、二人を見守るように咲き誇っていた。








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