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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
「…薫くん、飲みなさい。身体が温まるよ」
大紋春馬に差し出された温かいカップを受け取り、薫は頷くことしかできなかった。

…泉の部屋のベッドで裸で眠っていた司を目撃し、泉を問い詰めた。
泉は言い訳せず、司と愛しあったことを認めた。

目の前が真っ暗になるような衝撃を受け、泉の前から逃げ出した。
人気のない玄関ホールにしゃがみ込む薫に穏やかに声をかけたのは、大紋だった。
「…私の家においで。君には冷静になる時間と場所が必要だ」

大紋の書斎の暖炉の前で、傷ついた仔犬のように蹲る薫に優しく声をかける。
「ダージリンに少しブランデーを垂らしたよ。…正月くらいいいだろう」

…大紋の書斎はとても温かいのに、薫の心の中にはブリザードが吹き荒ぶようだった。
…どうして?どうして司さんとセックスしたの?
司さんには恋人がいるって、言ってたじゃないか…!
好きにならないって、言ってたじゃないか…!
嘘つき!嘘つき!嘘つき!
溢れる涙でカップの形も滲む。
必死で涙を堪えて、一口飲む。
甘い紅茶に上質なブランデーが溶け込み、胃の中からじわじわと温まる。

暖炉の傍らの椅子に腰掛け、ブランデーを口に運ぶ大紋を見上げる。
休日とはいえ、上質なストライプのシャツにシェットランドセーター、落ち着いた胡桃色のジャケットと、相変わらずお洒落な伊達男ぶりだ。
薫の父の礼也も若々しい美男だが、大紋も遜色ないほどに端正で洗練され成熟した紳士だ。

「…あの…暁人たちは…?」
この家に、出迎えるはずの暁人や絢子がいないことに今初めて、気が付いたのだ。
大紋は朗らかに笑った。
「麹町の絢子の実家に行っているよ。年始はいつもそうなんだ。絢子の両親が暁人に会いたがってね。
でも、薫くんがうちに来ていることを連絡したら、もうじきに帰って来るそうだよ」
「そうですか…」

…そうだ。今は正月なんだ。
本当だったら、自分だって箱根でみんなと楽しく過ごしているはずなのに。
…泉と…一緒に過ごして…。
…泉…!どうして…⁉︎
泉への憤りと司への嫉妬と…自分が泉に見捨てられたような悲しみに、喉元に熱い塊がせりあがる。

そんな薫を敢えて見ようとはせずに、大紋が静かに尋ねる。
「…間違っていたら謝るけれど…薫くんは泉が好きだったの…?…その…恋という意味で…」
薫は袖口でごしごしと涙を拭い、小さく頷いた。







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