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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
暁は、窓越しから聞こえるさらさらとした雪の降り積もる音で目を覚ました。
…元旦から雪か…。

東京で正月から雪は珍しい。
いつもより明るいのは雪明かりのせいだったらしい。

普段だったら朝が弱く冷え性の暁はそのまま瞼を閉じ、再び眠りの世界に沈み込むのだが、今朝は違う。

…ずっと暁を温めるかのように抱きしめる逞しく温かい胸の中で、ふっと微笑む。
男を起こさないようにそっと見上げる。

彫像のように美しく整った顔立ちが間近にある。
何度も…何十回も見上げている貌なのに、見つめるたびにどきどきと胸が高鳴る。
暁は月城の貌が大好きなのだ。
象牙色のなめらかな美しい肌、整った眉、彫りの深い繊細な目鼻立ち、貴族的な高い鼻梁、形の良い唇、端正な顎のライン…。
どれも全てがたまらなく大好きだ。
月城が起きているときは恥ずかしくてあまり見つめることは出来ないのだが、彼が眠っているときはいくらでも見つめられる…。
だから暁は眠っている月城を見つめることが大好きだった。

月城は今年四十代半ばを超える。
しかしその容姿は暁が月城に出逢ったころと少しも変わることのない若々しく怜悧な美貌だ。
美しく均整の取れた身体も少しも崩れることなく、若い頃の姿を見事に維持している。

暁は月城に抱かれる度に眩暈がしそうなほどの幸福感を感じる。
こんなにも美しい男に愛されていることが奇跡のように思えるのだ。

「…月城…」
暁はそっと囁く。
月城は眠ったまま無意識に暁の身体を抱き寄せた。
素肌の身体同士が密着する。
…月城は一糸纏わぬ裸だった。

暁は身体がかっと熱くなるほどの羞恥心を覚えた。
…何度も…いや、数え切れないほどに肌を合わせ、愛しあっているというのに愛する男の素肌に触れるだけで、恍惚とするような感情に襲われる。

暁は自分から月城に身体を擦り寄せる。
夜着を着ている自分の脚に月城の牡が触れる。
それは月城が眠りの中にいてさえも、やや兆していた。
硬く高い体温を保つ牡におずおずと脚を押し付ける。
月城の胸元からは水仙の香りが漂う。
例えようもない幸福な気持ちが暁を包み込み、思わず涙ぐみそうになる。
…何年経っても月城が大好きだ…。
信じらないくらいに彼を愛している…。
暁は静かに音を立てている月城の胸にそっとくちづけた。




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