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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
初詣を取りやめた二人は月城の家の居間で炬燵に当たりながら、雪見酒を嗜むことにした。
酒が弱い暁はお猪口一杯、二杯でその白い頬を薄桃色に染めていた。

月城の家の庭は日本庭園で、小振りだがきちんと剪定された松に日本画のように雪が降り積もる様子を暁はうっとりと眺める。
暁は月城の家が好きだ。
こじんまりしているが手入れが行き届き、どこか懐かしい香りがして…そこにいるだけで寛げる…そんな家だった。

子どものように頬杖をつき、熱心に雪を眺める暁に月城は愛おしげに微笑んだ。
「暁様は雪がお好きですね」
暁が振り返って無垢な笑顔を見せる。
「うん。大好き。…子どもの頃、雪が降ると母さんが仕事に行かないで家にいてくれたから。
…それに…」
少し哀しげな微笑みを浮かべる。
「…雪が降ると、母さんの男たちも大儀がって家には来なかったから…ほっとした…」
月城の胸はいきなり突かれたような衝撃を受けた。

…暁の母は色街で働きながら暁を育てた。
女衒のような男たちは暁の母を散々食い物にし、全てのものを奪い去っていった。
貧困の中で彼女は病に罹り、暁が14歳の時に亡くなった。
人買いに連れ去られそうになった暁を間一髪で救出したのが、異母兄弟であり、縣男爵家の跡取りの礼也だった。

「…雪が降ると、母さんが一緒に寝てくれるんだ。…うちは貧しかったから炭も碌に買えなくて…暖をとるものが何もなくてね。…寒さに震えてる僕を母さんが抱きしめて温めてくれるんだ。…薄い布団に包まって…。
母さんが、子守唄を歌ってくれて…。
そうすると段々暖かくなって…安心して眠れたんだ。
だから、雪は大好きなんだ」

…想像は容易に出来た。
痩せ細った…しかし透明な光を放つほどの美しい子どもを抱きしめるまだ若い母親…。
か弱く、男運のない幸薄い美しい母親は…それでも必死に我が子を育てたのだ…。
美しく…哀しいお伽話のような、親子…。

月城は暁を強く抱き寄せる。
「…私は…その頃の貴方と出会いたかった。…そして礼也様よりも先に、貴方を貧困と恐怖から助け出したかった…お母様もご一緒に…。それが詮無いこととは知りながらも、遣る瀬無くてなりません」

男の真摯な言葉に眼を細めて嬉しそうに笑う。
「…ありがとう、月城。…でもいいんだ。…今、こうして君といられる。君に愛されている…僕はとても幸せなんだから…」




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