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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
繰り返されるのは暁を愛おしみ慈しむ気持ちだけが詰め込まれた温かなくちづけだ。
性交の時は、すべてを奪い去るような獣めいた濃厚なくちづけを落として行くのに…。
…だから…反則だ…。
暁は月城のくちづけに酔いしれながら思う。

…こんなにも月城を愛している自分が不安になることがある。
戯れを口にしたが、月城はきっと浮気はしないだろう。
彼はとても誠実な男だ。
…だからそんなことで二人の絆が切れるとは思ってはいない。

暁がぼんやりとした不安の中で思うのは、何かの運命のいたずらで二人が引き離されたら…ということだ。
…軍靴の足音が喧しくなっていることは世事に詳しくない暁ですら察しがついている。

「軍の統制がまた厳しくなった。…海外輸入品の検閲が厳しすぎると報告だ。輸入国や輸入額にも規制が入るのも時間の問題だな」
先日、礼也が珍しく難しい貌をして報告書を眺めていた。
豊富な鉱山を所有する縣財閥は軍需産業での貢献も高く、軍に顔も効く。
かなりの融通を図ってもらっている部分もあるが、それでも特別扱いはされない。

…自分はたまたま貴族という特権階級にいる。
しかし世の中の流れでそれがいつ覆るか…。
しかも月城は平民だ。
二人の身分の違いがこれからどんな影響を与えるのか…。
…月城とも…本当に未来永劫ずっと一緒にいられるのか…。
暁は思わず月城の手をきつく握りしめる。
「…どうなさいました?」
暁は月城の肩に貌を埋めながら、囁く。
「約束して…。僕を絶対に離さないと…」
「…暁様…?」
「何があっても絶対離さないと約束して。…もし…万が一君と離れ離れになるのなら…」
月夜に輝く白く儚げな花のような微笑みを浮かべ、月城の引き締まった頬に両手を伸ばす。
「…僕を殺していって…」
月城の瞳が見開かれる。
「暁様!」
「…君に取り残されるくらいなら、死んだほうがましだ。…僕が一番恐れているのは…君がいない世界にひとり残されることだ…」
「…暁様…」
冷たい手が暁の手に重なる。
「…僕を愛しているなら、約束して。…僕をひとりにしないと…」
雪より白い暁の頬に透明な涙が流れ落ちる。
月城はその涙を吸い取ると、己れの胸深く暁を抱きしめた。
そのまま静かに囁く。
「約束します。…貴方を決してひとりにはしないと…」
雪は二人を永遠に閉じ込めるかのように、降り積もり続けていた。





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