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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第11章 海に映る星と月
「…そうでしたか…」
夕餉のあと、二人が話し込んでいたように見えたのはそのことだったのかと月城は思い至った。
昔気質の母が息子が男との結婚を選んだことを受け入れるには様々な葛藤があったはずだが、そんな風に暁を受け入れてくれてその上さらに、優しい言葉をかけてくれるとは…。
改めて母の偉大さと懐の深さを思い知らされた。

「すごく嬉しくて…泣いてしまったよ。
…お母さんは強くて優しい方だね…」
「…暁様…」
冷たい潮を含んだ夜風から、暁を守るように抱き寄せる。
「…僕はずっと申し訳なく思っていた。君に子どもをもたせてあげることができないことを…」
月城は眉を顰め、硬い口調で反論する。
「まだそんなことを…!」
「…ううん。僕が君の子どもを欲しかったんだ」
夜空の満天の星を映す瞳を潤ませながら、暁は月城を見上げる。
「…僕が子どもを使ってでも君を繋ぎ止めておきたかったんだ。君と離れたくなくて…。子どもがいれば君は僕から離れないだろう…て。
だから…潤くんを養子に貰えないかとまで考えた。
潤くんは君の甥っ子だし、君に似てるし…。
凜さんがやっと授かった子どもなのに…。
僕は浅ましくて酷い人間だろう…?」
海に眠る真珠よりも煌めく涙が暁の頬を伝う。
月城は優しくその涙を拭い、首を振る。
「いいえ。貴方は誰よりも正直で優しい方です。私を深く愛してくださるがゆえのお考えなのでしょう。
…けれど、子どもなど必要ないのですよ。
貴方さえいて下されば…私は何も要らないのです。
私は貴方と二人で生きて行きたいのです」

…行き着く先が天国か地獄か分からないけれども…
この白く華奢な手を離さずに…どこまでも二人で…。
暁は尚も涙を浮かべながら頷いた。
「…うん。お母さんの言葉を聞いてそう思った。…僕は君と二人で…二人きりで生きてゆく…。
それが二人の幸せなんだ…て。
…だから…」
…すごく嬉しかったんだ…。
言葉を刻んだ月明かりに浮かぶ薄紅色の唇を、堪らずに奪う。
潮風と暁の甘い吐息が混ざり、月城を夢見心地にさせる。

「…愛しています。暁様。聞き飽きたでしょうが…」
照れたように笑う月城に微笑み返す。
「死ぬまで言って…何万回も…永遠に…」
「愛している。暁…」
静かな愛の証しのくちづけを繰り返す。

…海には煌めく星々と満月が鏡のように映り、夢のように揺蕩っているのだ。




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