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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
礼也が足早に暁に駆け寄る。
「大丈夫だったか?暁。何もされなかったか?」
労わるように髪を撫でる礼也に、暁はにっこりと笑ってみせる。
「大丈夫です。兄さん。…少し誤解があったようです」
「…誤解…。本当にそうなのか?何か懸念はないのか?」
尚も心配そうに暁を覗き込む礼也の手を握り返し、首を振り微笑む。
「ええ。ご心配なく。…あの少しやんちゃな憲兵隊の方とワルツを踊っただけです」
まだ気掛かりそうに暁の手を握り返した礼也だが、とりあえずほっと胸を撫で下ろす。
そして、場内の招待客に和かな笑みを讃えながら声をかける。
「皆様、お騒がせいたしました。予期せぬハプニングがございましたが、全て解決いたしました。
引き続き、ダンスをお楽しみください」
楽団に眼差し一つで合図を送り、再び華麗な円舞曲の旋律が始まった。
暫く騒めいていた招待客たちも少しずつ、フロアに戻り始めた。
華やかな絹やタフタのドレスが花開くように円を描き出すのを、暁はほっとした思いで見つめた。

「…全く…最近の憲兵隊の傍若無人ぶりには目に余るものがありますな」
苦々しげに礼也に話しかけて来たのは、父親の代からの古い付き合いの海軍元帥だ。
「彼らは言わば叩き上げの一兵卒が多くてですな…。
碌な教育も受けずにただがむしゃらに上官の命令を軍用犬の如く聞く…。
我らが 海軍士官学校の教育とは真逆のメソッドで育てられ、管理されているのでいざこざが絶えんのですよ」
皇族も入学する海軍士官学校は、英国の同学校をモデルとし、教育、訓練、教養…特に語学には力を入れて来た開かれた学校である。
やや貴族趣味と揶揄される向きもあるが、自由で視野が広く、学業優秀者の多いエリートが集まる士官学校の校長も兼任していた彼にとって、品位のないヤクザ者のような振る舞いの憲兵達は嫌悪の対象でしかなかったのだ。
「暁くんのように美しく品行方正な青年に不埒な真似を…。全く許し難い!」
暁贔屓の強い海軍元帥は、我が事のように憤然としていた。

気の強い光が執事の生田を呼びつける。
「生田、お塩を撒いて!…日本ではこういう時にお塩って撒くのでしょ?お相撲以外に!」
生田は穏やかに頷いた。
「畏まりました、奥様」
礼也は暁の肩に手を置き
「少し休みなさい」
そう労わると、まだ興奮していきり立つ美しい猫のような妻をワルツに誘うべく近づいたのだった。

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