この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
暁は照れ隠しに、船内を覗き込んだ。
「今日の収穫はどう?」
月城は大きな生簀と新鮮な魚が跳ね回る網袋を苦もなく抱え上げ、船着場の地面に下ろす。
「イサキとスズキとカサゴ…それから新鮮なヤリイカと蛸も網にかかりました。
ランチはイサキの香草焼きをメインに…ディナーはカサゴでアクアパッツァ…蛸のカルパッチョも作れそうです。
ヤリイカでフライドカラマリも作りましょう。
新鮮なスズキで刺身風のマリネも出してみようかと考えています」
言葉で聞くだけで、出来上がりの料理が目に浮かぶ。
暁は瞳を輝かせた。
「美味しそう!月城のカルパッチョはすごく評判がいいんだよ。ホース・ラディッシュを入れたソースが絶品だってお客様が褒めて下さっていた」
「ホース・ラディッシュは山葵の一種ですからね。生魚をあまり食べないフランス人の口に合うように考えてみたんです。彼らは香辛料を効かせた料理が好きですから、抵抗はないのではないかと…」

月城は伝統的な南仏料理のほかに少しずつ創作料理のレシピを増やしていっていた。
山葵を使った料理や、日本の天ぷら風に揚げたイカやメゴチや鱚などの白身魚をシンプルに岩塩とドライハーブで食べさせる料理など…。
採れたて新鮮な魚介の旨さと相まって、繊細な味付けは途端に大評判になり、店は連日満員状態だ。
最近ではパリからわざわざランチやディナーを食べに来る食通も現れるほどだった。

目が回るほどに忙しいが月城と常に一緒にいられて、お客には喜んで貰える…。
暁は毎日しみじみと幸せを噛み締めていた。

「魚をマルセルのホテルに運んで来ます。暁様は先に帰られていて下さい」
マルセルとはフロレアンの兄で、ホテルのオーナーでありシェフでもある男だ。
厨房で修業をさせて貰ってから、二人は親友のように仲良くなっていた。
マルセルは月城と暁の店がオープンするに当たり、全面的に協力をしてくれ、懇意の客も紹介してくれた。
だから月城は店で賄いきれない魚介類は全て無償でマルセルのホテルに提供していた。
月城はマルセルに大変な恩義を今も感じ続けているのだ。

「フロレアンのアトリエにランチを届ける約束をしたんだ」
月城は優しく微笑んだ。
「腕によりを掛けて作ります」
行きかける月城の小麦色の腕を引き、今度は暁からキスをした。
…潮の香りと水仙の香りを胸一杯に吸い込む。
「…早く帰ってきてね…」


/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ