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第1章 シーン　1

「化粧や服、髪で女は変わるのよ。あたし普段は会社に化粧していったことないし、服だっていつも大きめのジーンズにダボダボのＴシャツやパーカーで通勤してるから雰囲気変えたら別人になれる。声だけは意識して変えないといけないけれど、それさえ気をつければ分かる事は絶対にないと思うわ。」
「テレビドラマじゃあるまいし、そんなバカな事信じられないよ。」
「どうして？」
「里菜のメイクした顔は何度も見ているからさ。そりゃあ別人かと思うほど可愛いくなるけれど、でもやっぱり里菜だ。見間違えるなんてなことはあり得ない。普段めったに会ってない人ならともかく、顔を突き合わせている上司を騙せるとは思えない。いいよ、人選はじっくり考えてみるから。同僚の山口か西塔あたりかまた違う人選で興奮しそうな相手を想定してみる。」
　大輔の中では結論が出てしまったみたいだ。こうなるとなかなか覆ることはない。どれほど説明しても納得はしてくれないだろう。実際に見せて納得させる以外には。