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第9章 シーン　9

　高原さんはキャバクラで会ったときとは口調も物腰も違って見える。会社に来てあたし達女子社員と話す時ともまた違う雰囲気で、浅田部長を接待する雰囲気を作っている。
「浅田部長はどちらの子がお好みですか？」
「うーんそうだねえ。二人とも美人で魅力的なので迷ってしまうけれど、僕の好みから言うと詩織さんの方が良いかな。」
「それでは詩織ちゃんは浅田部長の隣に、美奈ちゃんは僕の隣に座って下さい。」
　デートでもしているような空気になる。
「よくこういった席に呼ばれるのですか？」
　浅田部長が話しかけてくる。あたしは先程から緊張で喉がひりつくような気持ちがしていた。化粧も髪も服装も物腰も声さえも里菜を暗示させるものはない。１０センチのヒールを履いているので背丈も普段浅田部長と話す時の目線ではないため、目線の位置関係だけで印象も違って見え気付かれる事はないとは確信しているけれど、どこにどんな穴があるか分からない。慎重になり過ぎるに越したことはない。