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 奴隷メイドオークション ~正しいメイドの育て方~
第16章  梨香の事情と相談

「私は、父親の会社が、倒産しましたから……」
「そうだったんだ。返済して出て行った人がいるから、約束はちゃんと守ってくれるようだし。頑張ろう、美桜」
「はい」
 そう言うと、梨香さんはグラスを戻して手を振る。
「私、トリートメント取りに来たんだった。じゃあね」
「はい。さようなら」
 梨香さんが出て行くと、娯楽室が急に静かな空間になった。
 私がオークション前の部屋にいたのは、長くても一日。それも、眠らされていた。あのオークションの少し前に、私のご主人様はこの屋敷でのメイドを持つ資格の23歳になったんだろう。
 偶然と言えば偶然。奇跡と言えば奇跡。ご主人様があのオークションに来なければ、私は別の屋敷に買われていた。他の屋敷は知らないが、梨香さんのいう通り、ここの待遇には満足と言うしかない。
 何となく、溜息が漏れた。
 ご主人様にご奉仕して時給を上げてもらい、少しでも早くここを出る。その思いは変わっていない。
 でもここから出た後、自分は何をすればいいんだろう。ずっとここにいたら、ここでの生活が身に付くだろう。他の仕事が、出来るだろうか。
 私は覚めたコーヒーを飲んだ。
 それは、気の遠くなるくらい先の事。今考えても、どうにもならない。
 私はグラスを置き場に置いてから、ゆっくりと個室へと戻った。
 木曜の昼から金曜いっぱい、私の配膳は休み。
 配膳の忙しい時は邪魔になると思い、食事が終わる少し前に厨房へ行き、片付けを手伝ってから清掃。
 私は梨香さんと2人で、大広間のテーブルクロスを換えていた。
 前にもやったから簡単。
「これで終わりっ」
 梨香さんが溜息をつく。
「あの……。梨香さん……」
「どうしたの、美桜。昨日から元気ないよ。ご主人様がいないのは珍しいんだから、羽根伸ばさなきゃ。片付けも出なくていいんだし」
 梨香さんが笑いながら言う。
「あの……。ご主人様、オークションに行ったんです。ロリータの……」
「ホントに?」
「はい。オークションの後、一泊してから今夜戻るって。さっきも、執事に訊きました」
 私の言葉に、梨香さんが考え込む。
「三男に、ロリータの趣味は無いと思うけどなぁ」

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