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隠密の華
第11章 十

言えなかったのは、私が白夜の妻であるからで。

白夜の事を思うと苦虫を噛む様な感情が、毎回人として沸き上がるから。

「……本当だな?今の言葉」

「違うんだ……」

「俺の名前を言ったろ?本当は俺の事を想ってんだろ?」

「違うんだ……これは言葉のあやで……」

「何が違うんだ?俺から口付けられて、女の顔してる癖に」

ゆっくり唇を離しても至近距離に顔を近づけたまま、桐は私の言葉を聞いてクスッと笑う。

私が動揺している事に絶対気付いている……。

鼓動がばくばくと高鳴るわ、体温を上げ顔や体は熱いわ、目は泳ぐわ……桐と目を合わせる事も出来ない。

恥ずかしさで、気絶しそうだ。

「可愛い、都」

「っ……!」

そのまま話し掛けられて再び唇に桐が唇を重ねてくると、私は目を強く閉じ。

角度を変えながら何度も上下唇を激しく貪られて、意識が朦朧とした。

「ん……ん……」

苦しい。酸素が……。桐は何故こうも上手いのだ。やはり色んな女と……?考えると、不快になる。

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