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隠密の華
第11章 十

「……桐……」

尋ねようとして声を掛けるも、桐は真剣にひたすら右胸の先端を吸い上げており、私も喘ぐ。

「あっ……んっ……桐……設樂様と、何か、約束してたのか……?」

だが、どうにか気を張りながら尋ねると、……漸く桐が胸から顔を離した。

「ああ……約束というか。一年前、国を出る時に設樂様から言われたんだ」

「……何と?」

「俺の気持ちは知ってるってな。だから、絶対に何があってもお前に手を出すなと釘を刺された。少しでも触れれば処刑だとよ」

「処刑……?設樂様がそんなことを?」

「それだけ胡蝶と白夜の仲を壊さない様に気を付けてんだろうな。お前達に国の平和が掛かってるからな」

真剣に話す桐の言葉に驚いたが、設樂様らしいと変に納得する。

「……それなのによ、さっきの光景には正直驚いた。設樂様も都を想っていたとはな。それに自分だけお前に触れて……そんな抜け駆けないよな?」

ゆっくりと寂しげな桐の右手が頭へ伸びてくると、胸が高鳴った。

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