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隠密の華
第2章 一

それから暫く経つと、私は別の住処へ移された。どの建物も石造りで箱の様な家だが、先程いた住処が一番大きい。きっとあれが山賊の本拠にされていたかもしれない。入口には厳重そうに、見張りの男が二人立っていた。



とは言ったものの。別の場所へ移されても山賊達は常に私から離れず、交代で見張っている。どの男も物騒な武器を持ち、怪物の様な目で私をじろじろ見ては、薄気味悪く笑い掛けたり、体に触れてくる者もいて鳥肌が立つ始末。……せめてこの後ろ手で縛られている両手を解放出来たら良いのだが……。

「おい、お前料理は得意か?」

唐突に住処の入口で見張りをしている男から質問され、私は聞き返した。

「料理……?何故?」

「飯を作れる奴が病気で寝込んでんだ。女なら作れるだろ?お前、変わりに作れ」

「本気で言ってるのか……?」

……まずい。料理など生まれて一度もしたことがない。城では料理する者が決まっていたし、隠密になる前も家族が作ってくれていた。そんな私が山賊達の食事を作る?……無理だ。

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