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溺れる金魚
第15章  彼の怒り
頭に響く鈍い痛みが漸く和らいだのは日が傾き始めた頃だった。


このまま休日を無駄に終わらせてしまうのか。

そう思いながら佐野がベランダに目をやると、彼女が鉢に水をやっていた。



余程あの花が好きなのだろうか。

ベランダを覆い尽くすほどに増えていく鉢に佐野はため息を吐いた。


そこで忘れていた嫌なことを思い出した。


出張先の自分より年配の女社長の言葉。



その社長室にもあったのだ。同じ花が。


話のきっかけにそれを使ったのがいけなかった。





『私の知り合いもこの花が好きで、ベランダ一杯に飾っていますよ』


プライベートを下手に詮索されたくなく、知り合いと言ったのが間違いだったか。
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