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溺れる金魚
第15章  彼の怒り
ベランダで、彼女がそのリナリアに優しく手を伸ばし優しく一撫でする。その眼差しの暖かさを少しはこちらにも向けて欲しい。


佐野は花の手入れをし続ける紗良をぼんやりと眺めながら、そう思ってため息をまた一つ吐いた。


片想い。

まるで俺のことだ。


彼女にこの焦がれる想いを伝えることがで来たなら、どんなに楽か……。



いっそ今宵ベッドの上で問い詰めてしまいたい。

体を交じり合わせながら……。



彼女は誰にその想いを向けているのか。


淫らに狂う紗良に、問い詰め仕置きをしたい。

お前の夫は俺なのだとその体に教え込んでやる。




そんな無理なことを……と過った考えに鼻で笑う。
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