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溺れる金魚
第7章  友と
「うん……元気」

「……もしかして、まだ彼とは何も?」




それに、答えることなく紗良は小さく笑った。

「呆れた。それなら一層あんたの方から押し倒してみたら?」


未だに夜の行為どころかキスも無かった。

そんな事、誰にも相談してはいけないと思っていた。




それでも沙保里に話したのは、不安ばかりで頭がどうかなってしまいそうだったから。


膝の上で絡ませる指先に目を落としながら、彼女は静かに言った。


「きっと……私じゃ、ダメなのよ。こんな幼くって、体つきだって沙保里みたいな魅力も無い。彼を愉しませる程の技術もないし、ね」

自虐的に小さく笑う。




「それなら、別れたら良いのに」


「それは出来ないわ。離婚したらきっと……彼は父の反感を買って社長の座から降ろされるもの。父と代替わりして漸く落ち着いてきた会社にとってそれは良くないことだし、私もそれは望まない……」
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