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溺れる金魚
第13章  記憶の無い朝
紗良に初めて会ったのは、彼女がまだ高一で自身は二十八の時だった。

幼いながらも栗毛の艶のある髪と朱い唇が妙に色気を醸し出していた。


まだ当時は社長の秘書になったばかりだった。


「こんにちは」

先に声を掛けてきたのは彼女の妹で、その後遠慮がちに彼女も挨拶をしてきた。



それからも彼女が声を掛けてきてはこちらもそれに返していた。


忙しい時には決して邪魔はせず、こちらにもゆとりがある時にだけ恥ずかしそうに話し掛けてくる。

その距離感が心地よかったが、正直恋愛感情にまでは発展しなかった。



一回り以上離れた年に、するはずがない、とそう思っていた。





手に入れたいという強い欲求を持ち始めたのは些細な出来事。
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