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美肉の狩人
第1章 絶望の中で見つけた獲物 香織
 俺は高木圭介、42歳だ。とりあえず、公園のベンチに腰掛けて、雲ひとつない空を見上げている。腹が立つくらいの五月晴れだ。
 新緑の葉の隙間から落ちてくる光が眩しくて、目を細めたまま煙草をくわえる。ライターを探して上着のポケットに突っ込んだ手に紙切れに触れた。診断書だ。途端に、俺は舌打ちをしていた。
 「ちぇっ・・ガンか・・。おまけに手遅れなんて、笑わせるじゃないか。」
 確かに自業自得だ。ハードな仕事、不摂生な生活。会社の健康診断も、勝手に三度に一度と決めていた。そして、人事部からの業務命令で仕方なく受けた成人病検診。送られた封筒には再検査の指示が入っていた。
 忙しい中、プロジェクトを調整して総合病院を受診した。一日中、あちこちをたらい回しにされた揚句、今日中には結果は出ませんから、後日、改めて、ときやがった。
 そして、今日、ふたたび、病院を訪ねたってわけだ。
 それなのに、医者の奴、俺の顔を見るなり、そわそわしやがって、「ご家族もご一緒にとお知らせしたはずですが・・」なんて言い出しやがった。職業的笑顔で「すみません、私は天涯孤独なんです」っていったら、医者のほうが暗い顔になりやがって、それから20分もかけて、もって回ったような言い方でガンの告知をしやがった。
 いらいらしていた俺は、医者の話を遮った。病名は解った。で、結局、俺はどうなるんだ。そっちのほうが重要だろう。
 「先生、手術ですか、薬物療法ですか・・・それとも、もう手遅れですか」って聞いたら、暗い顔に引きつったような笑いを浮かべやがって、ぬけぬけと「申し訳ありませんが、最後のやつです」なんて言いやがった。
 だから、「前立腺がん、多臓器に転移。治療は、抗がん剤と放射線を併用。だが、保証できる余命は約6か月。」というのが、いまの俺の肩書だ。こんなのをもらってしまったら、某一流企業の40代、若手次長の肩書なんて、あっというまに霞んでしまう。
 そんなわけで、俺は、一気に人生の目標というものをなくしてしまって、いま、空を見上げているというわけだ。
 公園には、幼い子どもたちの声があふれている。楽しげに駆け回る子どもと、それを見つめる幸せそうな母親の姿。腹立たしいことに、ここには俺が失くしちまったものが溢れている。
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