この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
終止符.
第7章 ひび割れ
「えっ?」

「君に教えた事はないし、聞かれた記憶もない。社内でもわずかな人しか知らない筈だけど。」

「……」

純に抱かれた日の事を思い出す。

冷たい汗が背中を伝う。

「奈緒、いったい誰に聞いた。」

「……それは…寝言で…」

「えっ?」

「だから、その…」

「まさか…」

「本当です。だって他に何があるんですか?」

奈緒は必死に嘘を重ねた。

「始めは何を言ってるのかわからなかったんです。でも、何度も繰り返して呼ぶから…」

「…ごめん。」

「いぇ、いいんです。」

「悪かった。」

「構いません。」

一晩一緒に過ごした気安さで、つい口走ってしまった言葉を、篠崎のせいにして取り繕う。

ひどく惨めな気分になる。

「奈緒。」

「はい。」

「会える機会が減ると思う。」

「はい。」

「……」

「新しい家族が出来るんですから当然です。」

「……」

「奥様を大切になさってください。」

「あぁ。」

「足手まといになるつもりはありませんから。」

「奈緒。」

「外泊の言い訳はなんて?」

「それは気にしなくていい。私を疑ったりはしないよ、信頼されてる。」

「……素敵なご主人なんでしょうね。」

「最低だよ。」

「そうですね。」

「あぁ。」

篠崎は奈緒を抱きしめて唇にキスをした。

「愛してる。」


わかってる。


「もう、言わないで。」

「どうして。」

「また、わがままを言ってしまいそうなんです。」

「奈緒。」

「そろそろ帰ってください。私は、後から出ますから。」

「あぁ、そうだね。……奈緒。」

「はい。」

「寝言のこと……ごめん。」

「いいんです。ぜんぜん平気です。」

篠崎はすまなそうな顔をして奈緒の額にキスをした。

「それじゃあ、先に行くよ。」

篠崎がドアを開けた。

「…部長…素敵な時間でした。」

「私も同じだよ、奈緒。」

「いってらっしゃい。」

「いってきます。」

何度も繰り返して来た送り出す言葉が、今日は空々しい。

篠崎は妻に嘘を重ね、奈緒は篠崎に嘘を重ねる。
後ろめたさを隠しながら、裏切り続ける。

嘘が明らかになった時の事を、篠崎は考えた事があるのだろうか。

全てを捨てる覚悟はあるのだろうか。

危うい均衡を保ちながら、いつまでこの綱渡りを続けられるだろうか。


/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ