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愛のシンフォニー
第3章 同棲生活
「お、おう、頑張るで。徳造もバイトか、途中まで一緒に行こうや」

湊汰と徳造は仲良く肩を組んで歩き出した。

「とくちゃん、行ってらっしゃ~い」と美樹が元気いっぱいに手を振った。

「全く、朝っぱらから下品な男だ」と徳造は湊汰をたしなめる。

「まあそう言うなって。それよりもお前にもやっとカノジョができたか。おめでとう」

美樹はまだカノジョになったわけじゃないと言おうと思ったが、昨晩美樹と出会って一緒に帰ったいきさつは、何をどう説明したらいいか分からないので面倒になって「ありがとう」とだけ返事をした。

美樹のことをカノジョと言われて何だか嬉しくて、美樹のことが好きになり始めている自分に気がついた。ちゃんとした普通の恋をしていきたいと思う。

湊汰はコメディアンを目指していて、徳造とは同じ現場で芸をすることもたまにあり、ふたりは意気投合している。

湊汰も売れないコメディアンであり、昼間のフリーター的なバイトの稼ぎも雀の涙ほどであり、ヘタをすればアパートの家賃も払えない。
同棲相手のなぎさの風俗嬢の稼ぎで食わせてもらっているのが現状であり、実質はヒモ状態なのである。

その日は演奏だけで終わった。
品の良さそうな貴婦人といったカンジの女性に気に入ってもらってチップも弾んでくれた。
こういう貴婦人に気に入ってもらえるのはありがたいけど、先日の女社長のようにどこで豹変するか分からないので警戒はしてしまう。
警戒してもその場になれば抗えるはずもないのだけれど・・

「ただいま・・」

「あっ、とくちゃん。おっ帰り~」

そんなに深くない深夜に帰ると美樹がセーラー服姿で抱きついてきた。
美樹がいてくれたことや変な男が出てくることもないことにまずは安心を覚える。

その夜も美樹は徳造にヴァイオリンを弾いてくれるようにおねだりした。徳造は喜んで美樹の期待に答えてあげる。

徳造の奏でる優しい音色に聴き惚れてうっとりした表情を浮かべて美樹は暖かい眠りに落ちていく。

ー深夜の演奏会。観客は君一人だけ。この時の僕にはその演奏会がどんな豪華な場所で行われる演奏会よりも幸せなステージだった。僕の音楽を聴いて幸せそうに目を閉じる君は絶対に汚してはいけない天使に思えたんだー



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