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女王のレッスン
第1章 ■最初のレッスン

さっきおじさんに向けられたみたいな鋭い眼光が私を刺す。
何なのこの人。意味わかんない。一体何がわかるって言うの?

「……縛ったら、わかるってこと?」
「そういうこともある」
「縛れるようになったらわかる?」
「それはお前次第だな」
「なら教えて」
「あ?」
「……下さい」
「うわぁー。瑛二さんイジメっ子」
「茶化すなお前は」

カナちゃんを軽く睨んだ後、瑛二さんは私に向き直り嘆息した。
何を言われるのだろうと身構える。怒る?呆れる?馬鹿にする?

「……来週。同じ時間に来ればいい」
「は?」
「講習会。ただし1人でな。あと3回も来れば取り敢えずの基礎は出来る」
「教えてくれるの?」
「まあ、金さえ貰えれば誰でも」
「技術じゃなくて、今言ったことの意味」
「それはお前が自分で勝ち取れ。俺が関与することじゃない」

私は彼を見据え、彼は真っ直ぐに視線を返した。
まるで挑戦状。この猛禽類、捕まえるなんて出来なさそうだけど。
でも。

「名前は?」
「遥香です。前嶋遥香」
「はるか……」

逡巡するように口元に手を当てて私の名前を呼び、思いついたようにまた私を向いた。

「……ルカだな」
「ルカちゃん!」
「は?」
「ああ、これ一応名刺。渡しておくわ」
「……はあ」
「よろしくねールカちゃん」
「あとこれもやる。2mの麻縄。本結びはしっかり出来るようにしといて」
「……わかりました」

右手で名刺と縄を受け取って、左手はカナちゃんに握られて、真ん中の私が置いてけぼりになっている。
戸惑いを隠せない。だけど何かが始まる予感はする。
この奇妙な空間の中で。静かに、ゆっくりと。
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