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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ

「ちょっと、なんでそういっつも唐突に……」
「何かと間が悪くてね」
「信じらんない、なんなの間が悪いって――」
「そう言うなよ。じゃあ野暮用あるからまたな」
「あ、ちょっ――」

人の静止も聞かずぷつりと切られた通話。
本人相手にするように画面を睨みつけ

「……ほんっと、サイッテー」

無情なそこに向かって吐き捨てて、バッグに放り込んだ。
地下に入る前に空を見上げ、太陽を仰ぎ見る。
間もなく梅雨が明けて、夏が来る。
お願い事、何にしようかな。出来れば自分のことを願いたい。

エレベータで地下に降りてインターホンを鳴らすと、岩谷さんが顔を出した。

「ルカちゃん。早いね」
「はい。中で時間潰そうと思って」
「いいよ、どうぞ」

案内されて中に入る。荷物は入れずバックヤードへ通して貰った。
縄のチェックをひと通り済ませ、もう一度写真集をぱらりと捲る。
最後のフォトグラファー紹介のところにいる彼は、とても真摯な面持ちで誰かを縛っていて、そのパートナーを本当に愛しているように見えた。

ここ数か月で始まった691のイベント、『S女のための緊縛講習』は意外とニーズがあるらしい。毎回4組くらいいる。
8 Knotで縛っていることがタケさんに伝わって、見に来た彼に持ち掛けられ二つ返事で応じたのがきっかけ。
顔ぶれはいつも違うし教える難しさも体感しているけど、この先誰かが私みたいにこの世界に惹かれてくれたらいいと思う。
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