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毒蜜喰らわば
第13章 別れも幸せも成就
とてもきれいだったよ、と明るさを取り戻した茂の目が嬉しそうに歪んだ。

「その時にね、そろそろ終わりが来るのかなって、思い始めていたんだ」

茂も夢を見ていた。
遊女の念による夢だ。
恋願神社に足を踏み入れたのは私だけで、茂は行ったことはないだろうが、
それでも遊女の怨念が彼の夢の中で語りかけたという証しなのかもしれない。

「出来過ぎている偶然ね・・」

勢いをなくしたシャンパンの泡を見つめながら静かに息を吐く。
死者の残した念の強さにあらためて怖さと、そして切なさを感じた。


「そういえばね」

気分を変えたくて、突然私は話題を変えた。

「蛍庭園で会った友人のご主人とそのお友達、歴史ミステリー好きなんですって。
 楠木さんは歴史とか興味ある?」

「どっちかっていったら好きな方だけど・・
 歴史ミステリーって、たとえば徳川の埋蔵金とか?」

静かな音楽の下で、私は笑い声を弾ませた。
少し不似合だったと手で口を覆ったが、この偶然も笑わずにはいられないと、
つられて笑う茂を横目に笑いを引きずった。

「何?なんでそんなに笑うの?」

「だってぇ、私の友達とおんなじこと言うから可笑しくって。
 歴史ミステリーっていうとどうして徳川の埋蔵金なの?」

笑いの渦に巻かれて、私達の中にたちこめていた靄はすっかりなくなっていた。
もう大丈夫、もう私達はそれぞれの道を顔をあげて歩んでいける。
2人で重ねた時間を大切な思い出に変えて。


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